教育講演会を実施しました
2017年12月3日に、日本大学豊山高等学校・中学校の広報主任・田中正勝先生をお招きして「教育講演会」を行いました。社会科教員として、2013年の文部科学省大臣優秀教員に選ばれるなど、教育に対して熱心に取り組まれている方です。この度、聴講された保護者の方々からご好評を頂きました。多くの方々に読んでいただきたく、田中先生の発言要旨を公開いたします。
男の子って本当にトロいです。今日、この時期で初めて説明会に来た男の子がいました。成績を当てはめて学校を選ぶほど、この子にとって苦痛な3年間になってしまう。まず、親御さんがある程度情報を集めて持ってくる。その際に絶対にインターネットは駄目です。ネットの情報ほど当てになりません。今、SNS上の情報で良いことしか書いていない学校はありません。どんな学校にも悪いことが書かれています。発信しやすく、だれが発信したかわからない情報には(発信者の)責任がない。やはり、自分の目で見ていただくのが一番です。男の子の場合はいつか引っ張り出していかなければならない。絶対にケツを叩かないと前に進みません。そこがきちっとできている男の子は先々が楽しみですよ。男女の特性を学校の先生が見極めた上で普段接することができていると思うので、その接し方を見てもらいたい。
学校案内にはみんな良いことが書かれています。字面を読んだって、学校のことは絶対にわかりません。だから、先生に接してほしい。(教職員は大勢いるので)1人1人に会って話すことはできないし、私1人を見て学校を評価してほしいということは全くない。学校を訪れて、何かを感じる機会を持っていただきたいということです。大まかな学校選びの分け方は「公立・私立」より「共学・男女別学」だと思う。個人的な経験談ですが、男の子は「ありがとう」「ごめんなさい」が言えない不器用な人間です。特に家庭ではお母さんに対しては歯向かうことがこれから出てくるかもしれません。これは男の子からすると実は極めて自然な感情表現です。しかし、先日の当校ハワイ修学旅行でインフルエンザにかかって隔離された男子生徒2名が3晩お世話になった看護師さんに、ゴディバのチョコレートを持ってお礼を述べ、看護婦さんがいたく感動したそうです。これを空港に迎えに来たお母さんに話したら、「えっ?」と驚いていました。この成長をどのように遂げたのか私たちはわかりません。乱暴な言い方になりますが、学校の教員に頼ってはいけません。もちろん教員は学習、生徒、生活指導をしますが、生徒を一番に変えるのは学校の「空気」です。「空気」をつくるのは、立派な校舎や校名、偏差値ではない。そこにいる子供たちです。先輩の様子を見て後輩が育っていく。なので、実際に学校に足を運んで見ることです。そしてその一歩目を親御さんに示してもらいたい。空気が合うか合わないか直感的にわかると思います。ブランドとして確立している学校でも行ってみると「違うな」と思うことがあります。完璧に適合する学校はなかなか無いと思うが、その学校に放り込める勇気が親御さんにあるかどうかです。逆に、子どもとは正反対で経験のない気質の学校に入れるのもアリだと思います。
小中から高校、大学へと子どもたちは過渡期に当たります。いわゆる「良い高校を出て、良い大学に入る」は本当に幸せなのか。感覚的な幸せと中から出ていく幸せは異なる。開成や東大に行っても不幸せな人はいる。自分がその場で生活することにおいて、幸せというものをいかに表現できるか。こちらの方が重要だと考えます。だから、私は学校選びでやってはいけないことの何かでこう言います。「名前で選ぶな」「偏差値で選ぶな」「大学進学実績で選ぶな」の3つです。埼玉県は公立志向が強く、私立は一部を除いて二番手にまわる。地域で子供たちを育てていく感じがある。小中学校の仲間のネットワークがあり、そして、高校、大学に進むにつれてどれだけ懐を広げられるかです。色んな場所から色んな連中が来ている学校でエリアを広げていくことです。親御さんにとって、自分の子どもを学ばせたいと思える学校がどこかにはあります。子どもを一緒に連れていって、感覚的でいいので「どう思う?」というところから学校選びを始めてもらえればと思います。高校での3年間は非常に大きなもので、人生のベースになります。そこから大学を考えればいい。決してレールを敷かないでください。「○○高校に行けば□□大学に行きやすい」なんてことはあり得ません。努力次第では無名の学校から大学に行くことはできるし、名の知れた学校だからといって大学に行ける保証はない。大学を見据えると高校生活は勉強だけになってしまうけれども、高校生は多感な年頃なので友達づくりや心を鍛えるなども大切です。昔は「文武両道」という言葉があったが、今はそれを否定する教育評論家もいるくらいです。だがそうではなくて、色々なことに目を向けることによって、進路選択をしていくことが必要です。高校ではその後の人生の選択を迫られます。大きくわけるのが、文系、理系の選択です。理系でなければ医者にはなれませんよね。(それをなおざりにして)大学入試はこうだと言われて大学に進学して、「なんか違うな」と感じても時すでに遅し。実際にこういう子は多く、文部科学省の統計によると10%を超えている。大学入試は高校入試よりもはるかに大変です。そんな中で、「これをやりたいな」という自分の中のものをしっかりと出せるお子さんになってもらうためには、公立私立・共学別学問わず、「自分」を出せる空間に在ることです。学校という社会集団の中で存分に何かを学び得てほしい。そして、親御さんには躍起にならないでほしいな。ある程度の寛容さを持って、「アレもコレもダメ」と直球ではなくて「これは止しておいた方がいいんじゃない?」のような変化球でお子さんと接してみてほしい。子どもが行きたい方向には応援してあげてほしいし、間違った方向を向いていたら軌道修正をしてあげる。
(「空気」で学校選びをすることの不安に対して)学校で先生以外の人=売店のおばちゃんや職員、生徒ら=に“普段”の学校の様子を聞いてみたりすることで、「空気」が「実体」に変わっていきます。
ダイバーシティ(多様性)の中で人間は生きています。その中で自分をいかに出す術を持っているか。何でもかんでもやれという話ではなく、自分が自信をもっていることを言えるかどうかが大切だと思います。昔、塾長と話をした時に「『大卒で年収200~300万円の人』と『高卒で年収1,000万円の人』のどちらが幸せだと思う?」と問われたことがあります。金額でいったら、年収1,000万円だと思う。しかし、年収200~300万円の人でも自分が培ったものを思い切り出せるその瞬間を持っている人なら幸せなのではないでしょうか。もちろん大人になれば経済的余裕がある方が良いということになりますが、薄給でもどうしても就きたくてなった立派な職業の方もいますし、現実と理想のバランスをどう取っていくかです。